グレングールド27才の記憶

グレングールド27才の記憶(1959年 カナダ映画)
 夭折した天才ピアニストグレングールドの若かりし頃のドキュメント映画である。1960年前後のモノクロ作品で「off the record」と「on the record」の二本を合体化している。監督はローリング・ストーンズのドキュメンタリー映画でも有名なロマニ・クロイターとかゆー人。前半は自宅でくつろいだり、練習したりするグールドが観られる。パルティータ2番の様々な弾き方を模索する様子や、唄を口ずさみながら散歩したりする姿と田舎の長閑な風景とが絶妙にマッチして飽きさせない。作曲家何某との対談も面白く、シェーンベルクに対するくだりは抱腹絶倒ですらある。思索に耽り、孤独を好む彼の姿が映像からしみじみと伝わってくる。
 後半は「イタリア協奏曲」のレコーディング風景である。ニューヨークのスタジオにタクシーで到着するところから始まっている。1960年頃の大都会ニューヨークの有り様も手際良く語られている。コロンビアのスタジオでは自ら納得のいくまで、何度もテイクを繰り返す。必要とあらば継ぎ接ぎすら要求する。このシークエンスが故に彼はリサイタルから身を引きレコーディングを積極的に進めていくことになるのだ。それに付き合うプロデューサーやディレクターもそれなりの根性が要求される。ビハインド・シーンでは彼等のレコーディングの間の冗談などが紹介され、臨場感を醸し出している。しかし、彼等の一番の苦労はグールドの「唄声(唸り声?)」をいかにして録音しないかである。そのためマイクセッティングは大変な作業となる。
 こうして我々はイタリア協奏曲のレコーディングに参加し、グールドの素早い指の動きや異様な座り方に見とれつつ、汗みどろになり、プレイバックには一緒に耳を澄ませ、完成の喜びを共有するのである。この優れたドキュメンタリーから判ったことは、グールドの演奏スタイルの基本が「唄うこと」である点である(今更ではあるけども)。バッハの鍵盤楽器の曲をあのようにユニークな音楽性で語る秘密は、唄うパーフォーマンスを極めて効率よく指先に伝え得るという彼の超能力?にあったのだ。
 それ故、楽器には拘るから冒頭にスタインウエイ社の倉庫における「ピアノ選び」の模様があって興味深い。足を組んで座るから、ノンペダルとなり、キータッチもピアノというより古楽器のハンマーフリューゲルやハープシコードのようなものとなる。倉庫では選んだ後も延々と練習に没頭する姿は既に楽しみの域に達している感がある。
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はじめまして。JASONと申します。ホラー映画が大好きで放映される作品は大概録画して観ています。時間が許せば劇場にも足を運びますが、ことホラー映画に関して言えば米国で公開された数の十分の一くらいしか我が国で公開されないのが残念です。因みにハンドルネームのJASONは御存じ13金のシリーズから取ったものです。さて小生の他の趣味ですが楽器では習い事レベルですが、クラシックのヴァイオリンとジャズピアノを奏します。またカクテルに興味があり、冬はマンハッタン、夏はマルガリータなどを作って楽しんでいます。更に ホームページギャラリー「チェリーとジャンヌ」を公開中です。黒猫チェリーと白猫ジャンヌが登場するイラストストーリーとギャラリーの二本立てになっています。見て頂いた方々のご感想や意見交換などをホームページつくりに反映していきたくよろしくお願いします。なお、URLはhttp://parnassum.web.fc2.com/です。

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