エルンスト展

エルンスト展~6月24日まで。横浜美術館にて開催。
 マックス・エルンストはシュルレアリスムの巨匠である。コラージュ、フロッタージュなどの斬新な手法を始め、題材もユニークでJASONのフェイヴァレット・アーチストの一人である。前回は1977年に兵庫県立美術館で観ているから実に35年ぶりである。それほど開催の機会が少ない作家なのだろうか。
 今回は「フィギュア」という切り口で彼の作品を展示しているが、残念ながら全てが傑作という訳にはいかぬ。前述の手法の様に彼自身が筆を採るというより、誤解を恐れずに言えば「借り物」で構成した作品に傑作が多いのは皮肉かも知れない。通俗新聞の挿絵を切り抜いて作った作品(百頭女、慈善週間など)はまさにコラージュロマンに相応しい素晴らしさだ。今回はその「原画」が幾つか展示されていて白眉であった。一方、木目の「魚拓」ともいうべきフロッタージュはその文様を「森」と見立てて実にファンタスティックな絵画に昇華せしめている。
 そうした斬新な手法に拘るあまり、肝心の絵画のコンセプトに掴みどころが無くなるのはある意味仕方の無いことなのであろう。ひょっとして彼自身それをして自覚をした上で自虐を意図しているのかもしれない。その所為かエルンストの全貌とか特徴とかを問われたら彼は「その行為はむなしい。私は手法に拘ったのであってそこからのコンセプトは鑑賞者自らが構成して欲しい」などと応えるかも(あくまでも筆者の私見です)。だから小生にとって彼自身が絵筆を採った作品にはどうも入り込めないし関心を惹かれない。
 その昔かれこれ40年前になろうか。シュルレアリスムに関して意気投合した友人と同人誌を(一冊だけだけど)編纂したことがある。その誌名はDEM(デム)といって、ダリ、エルンスト、マグリットを捩ったものである。つまりシュルレアリスムの御三家をこのお三方に限定した訳である。しかしエルンストだけはその展覧会が極端に少ないことをみても他の画家に比べ極めて「一般的」で無い(つまりウケ無い)ようである。その意味でも今回の展覧会は極めて有意義であって評価されるべきものだと思う。一方、今回の出展の殆どが国内の美術館やコレクターからというのは何か理由があるのかと邪推してしまった。
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テーマ : ギャラリー展示案内
ジャンル : 学問・文化・芸術

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マックス・エルンスト展/横浜美術館 〜 2012.6.24

 エルンストとは学生時代からもう四十数年の付き合いになる。  ダリやマグリット、デルヴォーなどはよく知っているのに、大御所ともいうべきエルンストについては案外と知ら ...

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No title

 同人雑誌DEMは懐かしい話題ですが、ダリ、エルンスト、マグリッドの頭文字でしたねぇ。
 この中でエルンストだけが美術展での露出度が少ない。今回もシュルレアリスムの好きなぼくは楽しめましたけれど、どこか「掴み所のない人」という気分は残りました。あれやこれやといろいろな手法を試み、表面的には次々と作風を変えていたように見えるのが禍しているのでしょうが、シュルレアリスムというのはもともとそういうもの。ちょこっとシュルレアリスムに関わって、おいしいところだけ頂戴して、あとは自分の道に突き進んでいった画家は大成して、独自に画風や世界を切り開き、大家になっていった。シュルレアリスムに執拗に拘っていた画家は、開発した手法は次々と使われて、画家としては大家になり損ねた。なんか美術界の趨勢はそんなふうだったと思います。
 4月7日の本展オープニング・セレモニーにポンピドゥー・センターから女性が一人招かれて挨拶していました。たしか油絵のフロッタージュの作品もポンピドゥー・センターが出品していました。
 予算の厳しい地方美術館は水平の繋がりが非常に強く、どこかで何か企画展があると、収蔵品を融通し合ってなかなかしっかりした企画展になる傾向があります。しかし海外とのネットワークは弱いのです。やはり海外から作品を招き集めることができるのは国立系か、現代美術に特化した独立系の森美術館のようなところだ、といわざるを得ないのが実情です。
 そうしたハンディを企画力で乗り越えるのが地方美術館であり、横浜美術館はそこそこうまくやっている、と思います。
 各地に散らばる地方美術館、個人美術館にはそれぞれ特色があり、強い分野を持っています。それらのよいところ、強いところだけを集めると、日本美術ではかなり高度なことができますし、西欧美術では、とくに近・現代美術については、企画次第でなかなかの展示を行うことができるようです。

No title

ディックさん

コメントありがとうございました。

今回の収穫は(殆ど開催されない)エルンスト展を堪能したことと
横浜美術館の気合の入った企画運営でした。

折角関東に暮らしているからには時間の許す限りそうした地方美術館
を探索してみたいと思ってます。

ところでDEMは残存してますか?

小生はどこか探せばあるような・・・自信がないですが。

No title

JASON さん、
「DEM」、絶対に捨てるようなことはしていないはずですが、どこへしまったか憶えておりません。
ちょっと捜すのは大変かも…。

No title

ディックさん

JASONです。

DEMは一昨年関西から引っ越してきた時に荷物のどこかで見かけたのですが・・・。機会があれば探してみます。

巷ではツタンカーメン展が大人気らしいですが、混雑を考えると二の足を踏んでしまいます。

夏休みを絡めた人集めイベントにはろくなのがない

過去の経験からいいますと、夏休みに引っ掛けて人集めイベントのように催した展示には、何回か騙されて出かけましたけれど、やはりろくな展示はなかったてのでした。
その展示の内容に深い思い入れを抱いていると、それでも出かけたくなるわけですが、そういう方にはいまひとつだったりします。
ネットなどで十分に情報を収集して、かつ混雑の少ない時期を狙って行かれたほうがよいと思います。
プロフィール

JASON

Author:JASON
はじめまして。JASONと申します。ホラー映画が大好きで放映される作品は大概録画して観ています。時間が許せば劇場にも足を運びますが、ことホラー映画に関して言えば米国で公開された数の十分の一くらいしか我が国で公開されないのが残念です。因みにハンドルネームのJASONは御存じ13金のシリーズから取ったものです。さて小生の他の趣味ですが楽器では習い事レベルですが、クラシックのヴァイオリンとジャズピアノを奏します。またカクテルに興味があり、冬はマンハッタン、夏はマルガリータなどを作って楽しんでいます。更に ホームページギャラリー「チェリーとジャンヌ」を公開中です。黒猫チェリーと白猫ジャンヌが登場するイラストストーリーとギャラリーの二本立てになっています。見て頂いた方々のご感想や意見交換などをホームページつくりに反映していきたくよろしくお願いします。なお、URLはhttp://parnassum.web.fc2.com/です。

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