昭和9年のシンクロニシティ

(JASON通信アーカイブ その2)
 昭和9年のシンクロニシティ(2000年4月19日付)
 最近二冊の本を読んだところ、偶然の一致(即ちシンクロニシティ)を体験したのでここに記すことにする。先ずは「レコード・コレクターズ」。この雑誌に連載されている「蒐集奇談」はSPレコード(以下SPと省略)のコレクター氏のコラムで、当初は珍盤希少盤の話であったのが、興が載ってきてからは「全国SP掘り出し旅行記」と「戦前史」とが交互に数年に渡り連載されている。この後者の戦前史は丁度SPが発売され出した大正の頃からの社会史となっている。ここで、何故このSPのコラムに社会史なのか不思議に思われる輩が多いと思うので補足説明をしておく。未だラジオすら無い時代にあっては、SPレコードは音楽というエンターテインメントの他に情報を伝える貴重なメディアでもあったのだ。それは皇室関係の冠婚葬祭はいうに及ばず、社会的な事件(殺人事件や心中)、災害、芸能関係などあらゆることに及ぶ。つまり有名な事件?については必ずや「音楽~流行歌ですな」が作詞作曲され、録音されて全国津々浦々にまで広がったという訳なのだ。だから当時のSPレコードは同時に生活風俗史そのものと言っても良いのである。これは我が国独自の話では毛頭無くて、例のタイタニック号の事件では米国において様々な唄が作られている。蛇足ながらそうした唄は全てタイタニックに乗っていた黒人は体力があって泳ぎに達者で皆助かったことになっているらしい。また唄の内容が史実と違っていてもエンターテインメントとしてその辺は許容されていたようだ。 
 さて、今回の「戦前史」は年代からいくと昭和9年(1934年)となっており、前年の東京音頭熱覚めやらず「さくら音頭」というのが大流行して、舞台を始め映画まで作られ、それどころかレコード会社の「コロンビア」と「ビクター」が夫々別の歌手で違った唄をこしらえるという勝負?にまで発展したという。
 一方、ここでのもう一冊の本というのは寺田寅彦全集(岩波)の第14巻「日記2」である。これも作者の亡くなった年である昭和10年(1935年)迄が入っており、たまたまその前の昭和9年を読んでいたところなのだ。作者は死の前年にも係わらず?、結構優雅な生活をしている。午前中は航空機研究所や地震研究所に出掛け講義や研究をする。昼食は尋ねてきた友人知人家族とともに銀座の三越やレストランで食し、午後は驚くなかれ三日に一度は「映画」を見ているのだ。帰宅途中に丸善などで楽譜を頼んだりする。宵の口にはこれまた友人とトリオを楽しむ(因みに彼はバイオリンを担当)。また休日は家族揃ってデパートで弁当を仕入れると東京周辺にドライブ&ピクニックと洒落込む。奥方、娘さんも連日のように「歌舞伎」「芝居」「旅行」と目一杯楽しんでいる。どうも大学教授にしては「豊か」である。きっと原稿料で潤っていたに相違無い。作者は普段日記をそれほど几帳面には付けておらず、全く記していない年もあるのだが、この昭和9年は殆ど毎日のように記している。偶然にも昭和9年でシンクロニシティが発生した訳であり、再度両者を見直すことにした。なんか古い写真に何か写ってないか(UFO??心霊写真??)捜しているような心持ちである。そうこうしている内に、丁度前述のレコードコレクターズを買って読んだ日の4月19日の日記を見て唖然呆然とした。その日に作者は何時も通り映画を観に行っているのだが、その映画の題名はまさしく「さくら音頭」!!。
スポンサーサイト

テーマ : 本に関すること
ジャンル : 本・雑誌

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

JASON

Author:JASON
はじめまして。JASONと申します。ホラー映画が大好きで放映される作品は大概録画して観ています。時間が許せば劇場にも足を運びますが、ことホラー映画に関して言えば米国で公開された数の十分の一くらいしか我が国で公開されないのが残念です。因みにハンドルネームのJASONは御存じ13金のシリーズから取ったものです。さて小生の他の趣味ですが楽器では習い事レベルですが、クラシックのヴァイオリンとジャズピアノを奏します。またカクテルに興味があり、冬はマンハッタン、夏はマルガリータなどを作って楽しんでいます。更に ホームページギャラリー「チェリーとジャンヌ」を公開中です。黒猫チェリーと白猫ジャンヌが登場するイラストストーリーとギャラリーの二本立てになっています。見て頂いた方々のご感想や意見交換などをホームページつくりに反映していきたくよろしくお願いします。なお、URLはhttp://parnassum.web.fc2.com/です。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード