寺田寅彦 ヴァイオリンを弾く物理学者

寺田寅彦 ヴァイオリンを弾く物理学者(末延芳晴著)
 日曜日はその他のテーマということで今回は最近読んだ本を採りあげる。昨年末に出版されたばかりのこの本は物理学者であり、エッセイストでもあった寺田寅彦がヴァイオリンを“嗜む”ことを扇の要として様々な方面にわたり考察を繰り広げている。JASONの様にある意味彼の“ファン”である人間には堪らないテーマであり評論である。また「寺田寅彦 妻たちの歳月」に続く厚い単行本(テーマ同様に重い!)でもある。寺田寅彦がヴァイオリンに非常なる興味を示し、遂には買い求め、学者先生には指南を乞い、はたまた友人と合奏するに及ぶ、という有様はただ事では無い。よって著者はその理由、原因を探ることになる。それは当時我が国に初お目見えしたメディア、即ち“演奏家によるコンサート”であり“蓄音機”であり“ラジオ受信機”などであって、それらに寅彦が“何を観たか”がポイントになる。そして辿りついたのは“耳の感性”というわけだ。これは耳に限らず観察し分析し評価する寅彦独自の能力であって彼のエッセイをいくばくか読めばただちに分ることでもある。
 本書はその時代の文化人、夏目漱石や正岡子規などとの“文化的交流”にもスポット当てており実に興味深い。中には西洋音楽に関する分析など今以て色褪せない処があるのは見逃せぬ。ただ、寅彦がどれだけヴァイオリンを弾けたのかは資料が無いので全く分らない。また筆者は最後の方でジョン・ケージとの類似性を述べているが、実際的な話(二人は時代が違うので交流も何も皆無)では無く、完全に作者の“想いだけ”となって空回りしてしまっているのが残念である。
 とはいえ、寺田寅彦という一定の枠には収まらないクロスオーバーな活躍をした人物をヴァイオリンと言うキーワードで浮き彫りにした功績は確かに大きいものがある。彼のファンは必読であろう。
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テーマ : 読んだ本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

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JASON

Author:JASON
はじめまして。JASONと申します。ホラー映画が大好きで放映される作品は大概録画して観ています。時間が許せば劇場にも足を運びますが、ことホラー映画に関して言えば米国で公開された数の十分の一くらいしか我が国で公開されないのが残念です。因みにハンドルネームのJASONは御存じ13金のシリーズから取ったものです。さて小生の他の趣味ですが楽器では習い事レベルですが、クラシックのヴァイオリンとジャズピアノを奏します。またカクテルに興味があり、冬はマンハッタン、夏はマルガリータなどを作って楽しんでいます。更に ホームページギャラリー「チェリーとジャンヌ」を公開中です。黒猫チェリーと白猫ジャンヌが登場するイラストストーリーとギャラリーの二本立てになっています。見て頂いた方々のご感想や意見交換などをホームページつくりに反映していきたくよろしくお願いします。なお、URLはhttp://parnassum.web.fc2.com/です。

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