巨泉 人生の選択/大橋巨泉

巨泉 人生の選択/大橋巨泉(講談社文庫)
 司会者?で有名な著者がセミ・リタイア宣言をしたのが20年程前。その後は海外のスーブニールのチェーン店を経営するなどの情報しか入ってこなかったが、そのリタイアの真相に世間が注目?しだし、本著作として登場した訳。まあ一口に言えば「人生哲学」です。それも我が国には極めて「馴染の無い」しかし諸外国では「とーぜん」の部類にはいるというもの。 
 海外では人生の目的が「理想的なプライベイト・ライフ」であるから、いち早くリタイアするのがステイタスなんである。仕事、結婚などの全ての人生項目?はそれに向かっての「手段」でしかない。だから住まいですら投資(即ち売ること)を前提にして購入するし転職は当たり前なのだ。作者の場合、40年近く昔に(楽しい)リタイアを目的に人生設計を始めたところ、たちどころに我が国では実現できないことに気が付いたのであった。
 もともと日本人の老後は「孫の相手」程度であった。何故なら昔はリタイア前後の50才で皆死んでいたからである。しかし、世界有数の長寿国となった今、目的不在で生きてきた人々は一体これからどう生きるのか、極めて重要且つ悲壮な課題である。彼の提案する(楽しい)老後を約束する要素は順番に次の3つ、(1)健康(2)パートナー(3)財産である。大方の人は(1)財産(2)住むところ程度で5番目あたりに健康、パートナーに至っては7番目以降というところか。30年後を見据えた決断というのは日本人の最も苦手とすることだからだ。即ち最悪のケース迄考えるというのは「言霊の世界」ではそれこそ忌避すべきことだし、真剣に対峙するのも「仕事」や「賭け事」でない「人生」となると思考が凍り付いてしまう。つまりは目標達成能力はあっても目標設定能力は皆無という農耕民族の特徴なのであろう。また、農耕民族が故に暮らす場所や生業を変える、付き合う人々を変える、などということは極めて馴染みにくいことでもある。
 そうは言っても結局は人それぞれの生き方であるからして、この本は一つのヒントでしかないという意見も尤もである。しかしながら、我が国は外面的にはどんどんグローバル化するし、長寿国になるし、円は強いし、と変貌を遂げているのに対し、精神面では「大江戸鎖国時代」と全く変わっていないというこの大きなギャップは今後各個人の老後にますます影響を及ぼすことは想像に難くない。その時に「これが俺の生き方じゃわい」と言いきれるかどうか。本作は一個人の生き方を記してはいるものの、これからの日本人にとって重要なテーマを提示した貴重な本でもある。

スポンサーサイト

テーマ : エッセイ
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

JASON

Author:JASON
はじめまして。JASONと申します。ホラー映画が大好きで放映される作品は大概録画して観ています。時間が許せば劇場にも足を運びますが、ことホラー映画に関して言えば米国で公開された数の十分の一くらいしか我が国で公開されないのが残念です。因みにハンドルネームのJASONは御存じ13金のシリーズから取ったものです。さて小生の他の趣味ですが楽器では習い事レベルですが、クラシックのヴァイオリンとジャズピアノを奏します。またカクテルに興味があり、冬はマンハッタン、夏はマルガリータなどを作って楽しんでいます。更に ホームページギャラリー「チェリーとジャンヌ」を公開中です。黒猫チェリーと白猫ジャンヌが登場するイラストストーリーとギャラリーの二本立てになっています。見て頂いた方々のご感想や意見交換などをホームページつくりに反映していきたくよろしくお願いします。なお、URLはhttp://parnassum.web.fc2.com/です。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード