ボケの原因を探る/黒田洋一郎

ボケの原因を探る/黒田洋一郎(岩波新書)
 本日のテーマは日曜日なので「その他」のジャンルである。そこで出版は1992年とかなり古い本であるが貴重な情報源として紹介する。ボケの原因解明のスタートは“脳の研究”というこれまた最近になるまで医学の中では最も遅れている分野であって、初めから暗中模索、五里霧中となり、ネイチャーを初めとする学会誌は新発見、新説、などの発表ラッシュ(当時)だったそうな。
 ボケて死んだ人間の脳を解剖する、その生活実態を根気よく調べ上げる、家族構成しかり、食生活しかり、という地味ながら資料としてのデータ収集が先ずは基本である。しかし原因が推定されたところで、それを実験により確かめるのがこれまた大変なことである。どうもボケそのものが「慢性的」な徴候にあり、従って何十年というオーダーで原因が絡み合っているからで実験といったってそう簡単には出来ない。更に動物実験ではその動作の状態から呆けの程度を調べられるが、人間の場合は通常動作は大丈夫なのに、話の論理性が無いとか、短期記憶が無いとか非常に高度且つ複雑なのである。また機能障害といっても原因が運動神経なのか筋肉なのか判然としにくい(その場で解剖したら良いのだが)。
 以上の様な渾然とした状況下、古くからのデータ、諸外国の資料、論文、それに実はこれが脳の研究などでは重要なのだが、“他の分野”の様々な学説、論文などを収集し分析すると、どうも“ボケの原因らしいもの”が浮かび上がってくる。タバコなどの有害物質は想像がつくが、「アルミニウム」というのは馴染が無いかもしれない。病院で使用する胃腸薬や腎臓の薬に多量に含まれている場合があり、その患者が呆けたという事例はかなり多いという。
 以上は予防という観点からだが、呆けてしまった場合にも「リハビリ」でかなり回復すること、更には神経線維、ニューロンの伝達物質に効く薬もあることなどにも言及されており興味深い。実は脳自体は極めて強固にガードされており、有害物質が入らない仕組みになっている反面、一度入ると外に出てこないという弱点もある。またそうはいうものの、鼻の中は脳に直結しているので「鼻からの」浸入は容易である(クロロホルムなど)等々。という訳で、呆けをキーワードに人体の中央指令室(CPU)である脳の解明が現在DNA解析同様、医学の最先端であることをひしひしと実感できる優れた本でありました。
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はじめまして。JASONと申します。ホラー映画が大好きで放映される作品は大概録画して観ています。時間が許せば劇場にも足を運びますが、ことホラー映画に関して言えば米国で公開された数の十分の一くらいしか我が国で公開されないのが残念です。因みにハンドルネームのJASONは御存じ13金のシリーズから取ったものです。さて小生の他の趣味ですが楽器では習い事レベルですが、クラシックのヴァイオリンとジャズピアノを奏します。またカクテルに興味があり、冬はマンハッタン、夏はマルガリータなどを作って楽しんでいます。更に ホームページギャラリー「チェリーとジャンヌ」を公開中です。黒猫チェリーと白猫ジャンヌが登場するイラストストーリーとギャラリーの二本立てになっています。見て頂いた方々のご感想や意見交換などをホームページつくりに反映していきたくよろしくお願いします。なお、URLはhttp://parnassum.web.fc2.com/です。

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