タンパク質の音楽/深川洋一

タンパク質の音楽/深川洋一(筑摩書房)
 やや古い本の紹介で恐縮である。本書は題名からしてよう判らんのであるが、単純にして深遠な意味合いを含んでおる。こんな話をご存知だろうか。音楽を聞かせたトマトは美味しいとか、ビバルディの四季は旨いうどん作りに、パンの発酵にはベートーベンの田園が良いとか、そんな話である。実はこうした話を分子レベルで見事解明してみせてくれた画期的な本なのである。
 著者がこの原理?を解明したフランスの科学者から「タンパク質の音楽に関して日本でも特許を取りたいので相談に乗って欲しい」なる依頼を受けたのが話の発端である。大体音楽に特許なんてあるんかとか、出だしは極めて快調である。そのフランスの科学者は有名なド・ブロイとも研究してきた逸材であるが、若い時期はギター片手にレコーディングをした曲がフランスで大ヒットし(まあこのためフツーの学者センセイ達が気付かないテーマをものにしたのだけれど)、映画にまで出演したという一風変わったお方でもあるのだ。尤もこうした欧州のポピュラー音楽事情はわが国ではほとんど紹介されないのが何故か悲しい。
 さて、タンパク質の音楽である。タンパク質アミノ酸配列は現在二万種類近くあるのだが、その配列を音楽として捕らえるのが本テーマの基本である。それには分子の振動数を知る必要がある。相対性理論を持ち出すまでもなく、物質は「振動している」のは通説だろう。質量が微細になってもかなり高い周波数であるから、それをオクターブ変換して我々の耳で聞こえる「音程」まで下げる。それがくだんの「配列」と組み合わさり、とにかく旋律らしきものになるわけだ。つまり生き物に様々な働きをするタンパク質が音楽と密接な関係にあることになる。ここに人間様にとっては音楽を聴くと何かしら「感じる」ことの原理が存在するという訳である。各種実験の結果、食物の生育にはかなり明確な相関関係があることが判明している。人間に対してもヘモグロビンの音楽を聞かせて赤血球が増えたという事例がある。但し、人間には「個性」があって同じ音楽でも快適な人と不快な人がいるという事実もまた存在する。ここいらは未解決ということらしい。
 また、本書では各種タンパク質とメロディの関係は前述の特許の関係で冒頭の数小節しか紹介されておらず、少々残念である。小生の更なる要望は以下の如し。音楽は作曲者と演奏者と聴衆の三点から分析するべきものであり、この本は聴衆にのみ焦点をあてているから、例えばピアノ奏者は何故長寿なのかといったことにも言及して欲しかった。また、近年「プリオン」や「O-157」の例を出すまでも無く、悪性のタンパク質が注目されている。それらとの関連も(多分研究しているだろうが)知りたいところだ。
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はじめまして。JASONと申します。ホラー映画が大好きで放映される作品は大概録画して観ています。時間が許せば劇場にも足を運びますが、ことホラー映画に関して言えば米国で公開された数の十分の一くらいしか我が国で公開されないのが残念です。因みにハンドルネームのJASONは御存じ13金のシリーズから取ったものです。さて小生の他の趣味ですが楽器では習い事レベルですが、クラシックのヴァイオリンとジャズピアノを奏します。またカクテルに興味があり、冬はマンハッタン、夏はマルガリータなどを作って楽しんでいます。更に ホームページギャラリー「チェリーとジャンヌ」を公開中です。黒猫チェリーと白猫ジャンヌが登場するイラストストーリーとギャラリーの二本立てになっています。見て頂いた方々のご感想や意見交換などをホームページつくりに反映していきたくよろしくお願いします。なお、URLはhttp://parnassum.web.fc2.com/です。

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