八百万の死にざま

八百万の死にざま
 今回は古いミステリィを取り上げる。「八百万の死にざま」である。作者はローレンス・ブロック(早川文庫)で1982年の作品。様々なミステリィ・ベストでは必ず上位に来る(今となっては)古典的名作である。舞台は現代(1980年代)。主人公は警察をスピンオフした探偵マッド・スタガーでシリーズとしては数冊出ている。
 友人を通じて依頼された件はある娼婦がヒモから逃れたいというものだった。スタガーはヒモと話し合い事態は決着を向かえたかと思いきや、くだんの娼婦がめった切りで殺害される。そして次々と悲惨な殺人が続き、スタガーもそれに巻き込まれていく。というストーリーは実はどうでも良い。スタガーはアル中でしょっちゅうAAの会(アル中患者の更正会)に出掛けで同類の体験を聞く。ホテルに暮らしアルコールの魔力と必死に戦う。そうしたスタガーの毎日を殆ど同時体験させるべく、朝ご飯から寝る前のシャワーを浴びる迄をたんたんと描く。これがじわじわと説得力を持ってくるのだ。
 一方ニューヨークの治安の悪さをスタガーの読む新聞から極めて要領よく表現しており、誰もが殺人事件に巻き込まれる可能性を現実のものとして訴えている。「ウオーターシップダウンのうさぎ達」の如く、餌を与えられ、誰かが定期的に屠殺され、それを皆は故意に忘れるという具合に。このあたりの描写は実に凄い。表題はニューヨークの人口とこうした日常的な「死」を現わしたもの。ミステリィというより優れたノベルという感じである。傑作であります。
スポンサーサイト

テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

JASON

Author:JASON
はじめまして。JASONと申します。ホラー映画が大好きで放映される作品は大概録画して観ています。時間が許せば劇場にも足を運びますが、ことホラー映画に関して言えば米国で公開された数の十分の一くらいしか我が国で公開されないのが残念です。因みにハンドルネームのJASONは御存じ13金のシリーズから取ったものです。さて小生の他の趣味ですが楽器では習い事レベルですが、クラシックのヴァイオリンとジャズピアノを奏します。またカクテルに興味があり、冬はマンハッタン、夏はマルガリータなどを作って楽しんでいます。更に ホームページギャラリー「チェリーとジャンヌ」を公開中です。黒猫チェリーと白猫ジャンヌが登場するイラストストーリーとギャラリーの二本立てになっています。見て頂いた方々のご感想や意見交換などをホームページつくりに反映していきたくよろしくお願いします。なお、URLはhttp://parnassum.web.fc2.com/です。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード