森の小さな料理店

( JASON通信アーカイブ その5)
森の小さな料理店・MBSスーパーテレビ特集(1992年6月視聴)
 究極のグルメとは何であろうか。世にも貴重な珍味にありつく事だろうか。否である。浜松にある仏料理の店が今回の主人公である。彼(シェフ)は2年先まで予約が詰まっているという現業を打ち捨てて、静岡の山の中に入って仕舞う。彼の望みは唯一つ。新鮮な材料で料理を作る事。勿論、農薬なんて論外である。農家の人々が自ら食べる野菜に農薬を使っていないのは周知の事柄である。そこに目を付けたのである。
 1年間の準備期間を置いて、文字通り山の中の小さなレストランを開店するまでがこの番組の骨子である。まず、近隣の農家の人々に打ち解けなければならない。畑を借りてクレソンを植える。自然環境を利用したヤマメの養殖場を訪ねる。村祭りにも積極的に参加する、等々。有機栽培(即ち、農薬を使わない)のジャガイモと近くの牧場で調達した採れたての牛乳でポテトスープを作り、ジャガイモをくれた農家に持って行く。ついでにレタスのサラダも付ける。そして農家の人にスプーンとフォークの使い方を教える。農家の人は「こんな美味しいモン食べたこたないね」と顔をほころばせる。この辺りはもろ「パペットの晩餐会」であって中々面白い。
 さて、いよいよレストランオープンの日。前菜は「窓からの眺望」である。緑が眩しい。天然のシイタケを挟んだパイ、レストラン裏手の燻製小屋で作った自家製のローストポークのスライスを加えた野菜サラダ、メインディッシュは養殖の「マナゴ」(勿論採れたて)のムニエル。パンは近くにパン屋さんがないからこれも自家製。デザートは朝届いた特大のメロンを刻んだフルーツポンチ。総てが有機栽培、自家製、手作りである。これこそ究極のグルメである。別段高価な材料を使っている訳では無い。ただ食物本来の育ち方をした新鮮な材料というだけである。しかしこうした材料を使った料理がごく自然に食べられる時代はもうとっくの昔に過ぎ去ってしまった。だからグルメなんである。
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テーマ : おひとりさまグルメ紀行
ジャンル : グルメ

季節の音楽(卯月)

季節の音楽(卯月) チャーリー・ヘイデンのノクターン
 今回はいつものパターンに戻り、季節の音楽(卯月)をお送りする。で今回はチャーリー・ヘイデンのアルバム「ノクターン」を採り上げる。
 1970年代から今に至るまで永い間活躍しているジャズベーシストであるチャーリー・ヘイデンはリズムセクション(即ちドラムス&ベース)としてのアルバムは余り無い。反面ピアノとのデュオアルバムではケニーバロンとの「Night and the City」やハンクジョーンズとの「Come   Sunday」(ハンクの遺作となってしまったが)などが名盤の誉れが高い。またパットメセニーとのアルバムはグラミー賞を獲得した。
 そうした八面六臂の活躍をしているヘイデンが2000年に自らプロデュースしたアルバムがこの「ノクターン」である。アルバムコンセプトはキューバの夜、といっても我々には想像も付かないものだが、「南国の片田舎の夜の佇まい」とでも言ったら良いのだろうか。繁華街の道路は違法駐車の列、街路に漏れる酒場の光からはその喧騒が溢れてきそうなのだけれど満天の星空に圧倒されてか辺りは奇妙な静寂が支配して、虫の音すら聞こえてきそうな気配が漂う。この感覚は実に貴重で聞いていると心安らかになってくる。共演ミュージッシャンとしてピアノはゴンサロ・ルカルカバ、リズムはイグナシオ・ベローアということで二人ともキューバ出身である。ゲストにはサックスのジョー・ロバーノ、ギターのパットメセニーというところだ。
 先月弥生は季節に未だ寒々しい感覚があるが故にスイングジャズなどの景気の良い(ホットな)音楽が似つかわしいのだが、卯月になると世間が極めて賑々しくなってくる。そうなると反対に静寂溢れる音楽についつい傾いてくるのだ。その点この「ノクターン」は絶好であっていわば花冷えのする春の宵にはぴったりだと思う。

テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

魔法のカクテル

(JASON通信アーカイブ その4)
 魔法のカクテル/ミヒャエル・エンデ/岩波書店(1993年5月10日付け)
 ネバーエンディング・ストーリィでつとに有名なM・エンデの長編の登場である。一口に言えばアダルト・ファンタジィの傑作である。つまりは「大人の童話」なんであり、わが国では最も馴染みの無い日本人の苦手とするジャンルという事。従って本書は「童話本」として区分されるから、本のタスキには「小学4年生以上」なあんて書いてある。お笑いでしょう。これは岩波さんのジョークとここは理解しましょう。
 お話の始まりは大晦日(ジルベスターという)を迎えようとしている悪魔(悪魔と大晦日とは一体なんじゃい、と思われる方はこの手の本とは無用の人である)が悩んでいる。何を悩んでいるのかとゆーと、地下の大魔王と契約したその年の内にしなければならない悪事が達成されていない事。海洋汚染とか、砂漠化とか、民族紛争とか、テロとか、ハイジャックとかが予定の件数に至ってないのである。あははは愉快ですね。しかも突然彼の叔母さんが訪ねて来て、このお方も達成できそうになくて悩んでいるのだが、二人して人類を滅亡させるカクテルを作り始める。これを真夜中までに水道水に入れれば良いのである。というところで正義の騎士登場と成り、これが猫と鳥。つまり動物達だけは彼らの悪事を関知していたという上手い設定なんである。であるけどこの二人(二匹か?)は自意識過剰、誇大妄想狂、弱虫、というどうしようもなく頼り甲斐の無い連中なのである。従って物語はあちこちでズッコケ、ひっくり返り、波乱万丈、荒唐無稽、支離滅裂というJASON好みに展開して誠に痛快なんであります。もうサイコー!蛇足ながら挿絵も素晴らしく、字も大きいから(童話だもの)老人向けでもあります。(筆者注・・・2012年現在も岩波書店より単行本として発売中。尚、小学4年生以上という但し書きも健在?である)

テーマ : ブックレビュー
ジャンル : 本・雑誌

ボンベイの踊り子たち

(JASON通信アーカイブ その3)
 ボンベイの踊り子たち(1992年6月 WOWOWにて視聴)
 近年のベストに入るであろう優れたドキュメンタリーである。それもそのハズで脚本はあのジェームス・アイボリィ(!)なのだ。インドのボンベイ市の一角にあるスラム街~スラム程ではないかも知れないが古びた巨大なアパート群~が舞台である。人々の夜の娯楽は若い女性の踊りを観に行くこと。それは各家庭(!!)で行われているのだ。帷(とばり)が降りる頃になると、家々には音楽師達が三々五々楽器を携えて集まって来る。準備が整えば家の娘たちが唄い踊る。そして男たちがやって来て金を落とす。人気のある家は超満員である。一家の生活の糧は一重にこの娘たちにある。だから踊りのスクール(と言ってもこのアパートの別の場所)に通う。有名な先生は人気がある。そのレッスンはかなりキツいが娘たちは一生懸命である。上手くいけば金持ちの二号さんになれるかも知れない。そうすれば家には莫大な金が転がり込む。老後も安泰というわけだ。男の子も楽器の天才(?)が家から出ればまた収入が増える。家といっても狭いアパートの一室である。客用のマットが隅に敷かれ、中央は踊り場である。娘たちが順番に歌い踊る。客から時々金が出ると女将(即ち一家の母親)がスーと手を出して取る。さてトリはその女将の歌である。朗々と力強く唄う。言葉なんぞ判らなくてもその迫力には圧倒される。インドの唄と踊り、そのルーツがここにある。
 アパート群は賃貸であり、家賃を取って回る男が居る。勿論家主はそこには住んでいないから代役の集金人みたいなものである。その男が物語の導入を受け持つ形で、この台詞にアイボリィのセンスが光る。仕事上、アパート全員の状況を常に把握しているというこの男も昔は踊りの一聴衆に過ぎなかったという。なんか凄いものを垣間見てしまった、そんな気にさせる作品であった。

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

昭和9年のシンクロニシティ

(JASON通信アーカイブ その2)
 昭和9年のシンクロニシティ(2000年4月19日付)
 最近二冊の本を読んだところ、偶然の一致(即ちシンクロニシティ)を体験したのでここに記すことにする。先ずは「レコード・コレクターズ」。この雑誌に連載されている「蒐集奇談」はSPレコード(以下SPと省略)のコレクター氏のコラムで、当初は珍盤希少盤の話であったのが、興が載ってきてからは「全国SP掘り出し旅行記」と「戦前史」とが交互に数年に渡り連載されている。この後者の戦前史は丁度SPが発売され出した大正の頃からの社会史となっている。ここで、何故このSPのコラムに社会史なのか不思議に思われる輩が多いと思うので補足説明をしておく。未だラジオすら無い時代にあっては、SPレコードは音楽というエンターテインメントの他に情報を伝える貴重なメディアでもあったのだ。それは皇室関係の冠婚葬祭はいうに及ばず、社会的な事件(殺人事件や心中)、災害、芸能関係などあらゆることに及ぶ。つまり有名な事件?については必ずや「音楽~流行歌ですな」が作詞作曲され、録音されて全国津々浦々にまで広がったという訳なのだ。だから当時のSPレコードは同時に生活風俗史そのものと言っても良いのである。これは我が国独自の話では毛頭無くて、例のタイタニック号の事件では米国において様々な唄が作られている。蛇足ながらそうした唄は全てタイタニックに乗っていた黒人は体力があって泳ぎに達者で皆助かったことになっているらしい。また唄の内容が史実と違っていてもエンターテインメントとしてその辺は許容されていたようだ。 
 さて、今回の「戦前史」は年代からいくと昭和9年(1934年)となっており、前年の東京音頭熱覚めやらず「さくら音頭」というのが大流行して、舞台を始め映画まで作られ、それどころかレコード会社の「コロンビア」と「ビクター」が夫々別の歌手で違った唄をこしらえるという勝負?にまで発展したという。
 一方、ここでのもう一冊の本というのは寺田寅彦全集(岩波)の第14巻「日記2」である。これも作者の亡くなった年である昭和10年(1935年)迄が入っており、たまたまその前の昭和9年を読んでいたところなのだ。作者は死の前年にも係わらず?、結構優雅な生活をしている。午前中は航空機研究所や地震研究所に出掛け講義や研究をする。昼食は尋ねてきた友人知人家族とともに銀座の三越やレストランで食し、午後は驚くなかれ三日に一度は「映画」を見ているのだ。帰宅途中に丸善などで楽譜を頼んだりする。宵の口にはこれまた友人とトリオを楽しむ(因みに彼はバイオリンを担当)。また休日は家族揃ってデパートで弁当を仕入れると東京周辺にドライブ&ピクニックと洒落込む。奥方、娘さんも連日のように「歌舞伎」「芝居」「旅行」と目一杯楽しんでいる。どうも大学教授にしては「豊か」である。きっと原稿料で潤っていたに相違無い。作者は普段日記をそれほど几帳面には付けておらず、全く記していない年もあるのだが、この昭和9年は殆ど毎日のように記している。偶然にも昭和9年でシンクロニシティが発生した訳であり、再度両者を見直すことにした。なんか古い写真に何か写ってないか(UFO??心霊写真??)捜しているような心持ちである。そうこうしている内に、丁度前述のレコードコレクターズを買って読んだ日の4月19日の日記を見て唖然呆然とした。その日に作者は何時も通り映画を観に行っているのだが、その映画の題名はまさしく「さくら音頭」!!。

テーマ : 本に関すること
ジャンル : 本・雑誌

JASON通信アーカイブ その1

JASON通信アーカイブについて
 本ブログのJASON通信であるが、発祥は誠に古く?1991年である。当時はブログなどは無くて伝達手段はワープロ&紙メディアであった。しかしながら扱うテーマは現在と余り変わりがなく、ホラー映画、音楽、グルメ、コンサートなどが中心であった。そこで「古きを訪ねて」という訳ではないが、昔の内容を再度ブログなる新しい手段で復活するのも悪くは無いと(勝手に)考え、今回の企画となった次第。なにとぞよろしくお願いしたい。
 トップバッターは米テレビシリーズの「トワイライト・ゾーン」の一編「人形の家」である。今では殆ど再放送されていないSFミステリィ番組で後年の「タモリの世にも奇妙な物語」や「Xファイル」、「フリンジ」などの手本になり、スピルバーグにより映画化もされた。

(JASON通信アーカイブ その1)
 トワイライト・ゾーン「人形の家」(1991年2月21日付)
 SFTV番組の祖とも言える、名作アンソロジー「トワイライト・ゾーン」は本来30分シリーズであるのだが、何を血迷うたか第4シーズンは60分ものが18本製作された。今観るとその分冗長の感は拭え無いのだが、シリーズの中でもファンタスティックな作品が並び、そのアイディアは観るべき内容が多い。殆どの脚本はチャールズ・ボーモントが手掛け、イマジネーション豊かなドラマが展開する。
 そのシーズン最終作品がこの「人形の家」である。未だスリムなロバート・デュバルが30歳独身のマザコンの神経質そうな卯脱のあがらぬサラリーマンを見事に演じている。話は彼がふと立ち寄った博物館に展示してあるミニュチュアの家(即ちドールハウスですな)の人形に魅せられて、段々オカシク成っていくとゆー、どちらかといえばサイコなストーリーだけど、デュパルの今様で言えば「アブナイ」演技は白眉である。特に彼独特の目線による狂気の表現は凄い。つまり彼の見つめるドールハウスの人形が動き出し、ハウス内の女性の人形に悪人(これも人形だ)が迫りくるのだが、くだんの女性を救うため彼が採った行動とは果たして・・・?というわけ。一方それらをサポートする凝りに凝ったミニチュアのセット、周囲の人々のありきたりの生活感覚との対比、等の渋い演出も忘れ難い。
 はっきりいうてシリーズ最高作なのではないか。勿論オチは予想が簡単についてしまうし、ドラマとしての意外性も少ない。しかしここには上質のファンタジーが息づいている。つまり夢と希望と狂気と挫折が見事に融合されているのだ。
 それにしても女性の人形が弾く曲がモーツァルトのK331の第一楽章で、しかもハープシコードによる演奏だし、人形の演技はワザと大袈裟にしたり、いかにもジオラマというキャメラワーク、そしてBGMには「ト調のメヌエット」がさりげなく流れたりと巧妙なつくりには本当に脱帽モンでした。

テーマ : 海外ドラマ(欧米)
ジャンル : テレビ・ラジオ

プロフィール

JASON

Author:JASON
はじめまして。JASONと申します。ホラー映画が大好きで放映される作品は大概録画して観ています。時間が許せば劇場にも足を運びますが、ことホラー映画に関して言えば米国で公開された数の十分の一くらいしか我が国で公開されないのが残念です。因みにハンドルネームのJASONは御存じ13金のシリーズから取ったものです。さて小生の他の趣味ですが楽器では習い事レベルですが、クラシックのヴァイオリンとジャズピアノを奏します。またカクテルに興味があり、冬はマンハッタン、夏はマルガリータなどを作って楽しんでいます。更に ホームページギャラリー「チェリーとジャンヌ」を公開中です。黒猫チェリーと白猫ジャンヌが登場するイラストストーリーとギャラリーの二本立てになっています。見て頂いた方々のご感想や意見交換などをホームページつくりに反映していきたくよろしくお願いします。なお、URLはhttp://parnassum.web.fc2.com/です。

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