季節の音楽  弥生

季節の音楽  弥生
 季節の音楽(弥生)は「モーツァルト作曲デュポールのメヌエットによる9つの変奏曲(演奏クララ・ハスキル)」を採り上げる。
 モーツァルトのピアノ曲のジャンルの一つに「変奏曲」なるものがある。これは先ずテーマがあり、続いてその変奏、即ち骨組みは一緒だが飾り付けなどで変化を持たせた曲が次々と並ぶというもの。変奏の部分はあれこれバラバラでも一向に構わないのだけれども、出来れば「変奏の仕方」にもある程度の統一感があると、全体としてのまとまりは出てくる。またその統一感に緩急のメリハリを付け、更に山場をこしらえたりすれば全体の見通しは更によろしくなって一大シンフォニーに匹敵する風格すら漂ってくる。しかも最後の変奏曲は徹底的に盛り上げるだけ盛り上げ、ピアノ協奏曲のカデンツァよろしくあたかも「息を呑むような」かつ「圧倒的な」パーフォーマンスで締めくくれば最高である。
 ところで最初のこのテーマだが、これは曲としての「引き込みの役割」を担うものだからシンプルかつ印象的で無くてはならぬ。またモーツァルト自身はテーマよりも変奏の部分に作曲家としても想いを十分に発揮したいということもあったであろう。よってテーマには既存の旋律が使われる場合が多く、ご他聞にもれずこのデュポールのテーマもモーツァルトが宮廷での職を希望してポツダムを訪れ、そこで出会ったチェロ奏者ジャン・ピエール・デュポールの作品から想を得ている。つまりは変奏曲のテーマとしてモーツァルトに気に入られたと言って良いかも知れぬ。
 というわけで万人ウケのする旋律が提示され、その変奏(つまりはアドリブ)が続き、盛り上げるだけ盛り上げ、最後はキメ節でフィニッシュ!と言う流れは実はジャズそのものなのであって、モーツァルトの先見性?!に驚かされるのだ。
 さてこの曲は意外に録音が少ない。というかモーツァルトのピアノ作品は協奏曲やピアノソナタなどが圧倒的に多く、片隅に押しやられている感じなのだが、その中ではクララ・ハスキルの精緻な演奏がベストであろう。
 その昔小生が高校生だった頃、土曜日の午後3時からNHK-FMでクラシックの定時番組があった。その番組冒頭ではステレオのチャンネルのチェックとして右、左、両方と音を鳴らし、リスナーの機器がちゃんと動作しているかを確認させる(今となっては信じ難いことだが)催し?があったのだ。その時に使用されたのがこのデュポールのメヌエットのテーマだったわけ。テーマの前半分が左、続いて反復部が右、そして後半の旋律が両方のチャンネルという訳で、週末の午後、辺りが静まり返って午後の日差しが柔らかく差し込む中、何とも言えず心和む時間が流れていたことを今でも思い出すことが出来る。そしてそれは早春の頃なのであった。
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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ルドンとその周辺―夢見る世紀末

ルドンとその周辺―夢見る世紀末(三菱美術館)
 このブログはホラー映画がメインであるが最近その話題が無い、とのお叱りを受けそうなので少しは関連があるかも?知れぬ「ルドン展」なる美術展を採りあげてその代わりとしたい。
 オディロン・ルドンは19世紀後半にパリで活躍したがその画風は同時代の印象派などとは大分に異なる。ある意味シュールレアリスムを先取りしたような怪奇幻想の趣があるのだ。   
 小生は子供の頃に戦後初来日した「ルーブル美術館展」でルドンの「夢魔」に出会い強い印象を受けた。続いて1989年に竹橋の近代美術館で開催された「ルドン展」でその全貌を初体験した。その時の印象は今までに見たこともない「黒」であった。それは漆黒を通り越した異世界の「黒」なのであった。そして今回は色彩豊かな作品が彼の真骨頂では全くないことを再認識した。
 とまあ様々なルドン体験?をしてきた訳だが、小生の好みは一連の石版画集であるエッチング(もしくはリトグラフ)の作品である。題材からして人間の顔を花としてを咲かした植物とか目だけを強調した異様な生物とか、とにかく怪奇幻想(即ちホラー映画の造形に通じる)の佇まいは実に素敵で堪らない。オーブと思われる物体が浮遊していたり、人の肩越しに顔があったり、きっと彼は「霊魂」を実際に観たり体験したりしているのだと推察して仕舞う。そして漆黒の黒は画面構成が精緻を極め白とのコントラストが極大にまで拡大してこそ為し得た世界の黒なのである。反面色彩作品では題材を人物や動物に求め何とも詰まらない作品に終わっている。尤も一連の花の作品は分かり易く?好ましいものではあるのだが。
 さて本展覧会の作品140点余りの殆どが岐阜美術館所蔵のものだという。但し、一点だけ「グランブーケ」なる巨大な作品は仏男爵から三菱美術館が取得し110年振りに公開された作品である。今回の展覧会の企画意図はグランブーケの初公開にあったというが、それにしてもルドン以外の作家を「周辺」ということで付加するのは統一感が無くなってよろしくない。というか早い話ルドンの作品以上の逸品もかなりあるわけで「周辺」の弊害も計り知れぬ。
 とはいえこの三菱美術館のユニークな構造も含め今回の展覧会でルドンを再体験できた価値は非常に高いものと認めざるを得ない。(3月4日まで)

テーマ : 美術館・博物館 展示めぐり。
ジャンル : 学問・文化・芸術

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JASON

Author:JASON
はじめまして。JASONと申します。ホラー映画が大好きで放映される作品は大概録画して観ています。時間が許せば劇場にも足を運びますが、ことホラー映画に関して言えば米国で公開された数の十分の一くらいしか我が国で公開されないのが残念です。因みにハンドルネームのJASONは御存じ13金のシリーズから取ったものです。さて小生の他の趣味ですが楽器では習い事レベルですが、クラシックのヴァイオリンとジャズピアノを奏します。またカクテルに興味があり、冬はマンハッタン、夏はマルガリータなどを作って楽しんでいます。更に ホームページギャラリー「チェリーとジャンヌ」を公開中です。黒猫チェリーと白猫ジャンヌが登場するイラストストーリーとギャラリーの二本立てになっています。見て頂いた方々のご感想や意見交換などをホームページつくりに反映していきたくよろしくお願いします。なお、URLはhttp://parnassum.web.fc2.com/です。

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