パウル・クレー展 おわらないアトリエ

パウル・クレー展 おわらないアトリエ(東京国立近代美術館)
 地下鉄東西線竹橋駅の改札口を出ると、駅係員(と思われる)の「だみ声」が響く。「え~クレー展のチケットはこちら~」と。早速求めて「今、混んでるかね」と聞くと「そろそろ混みだしたかな」と素っ気ない返事。つまり全く確認していないわけ。しかしここでチケットを買ったのは正解だった。美術館のチケット売り場は結構並んでいたからだ。
 さてJASONにとっては1996年の大阪は大丸ミュージアム以来実に15年ぶりのクレー展である。今回は副題の「おわらないアトリエ」にあるように作品が出来るまでのプロセスを主に紹介している。それには原画を初めとして様々な材料が必要なのだが、これが結構完備しているのだ。元々自分の作品をアトリエに大量に展示(これは保管に非ず)している程だから、そうしたコンセプトにも耐えられるのかも知れぬ。常に自分の作品を分析することが次の創作へのステップとなっていたのであろう。結果的には今彼の作品を鑑賞する側にとっては大変なサービス精神となっているといって良い。また作品だけでなく展示方法にひと工夫あるのも彼の特徴のようだ。
 クレーの作品に具象画は殆ど無いが、キュビズムやシュールレアリスムの如き絵画から記号、模様、点描、など実に多種多様である。正に捉えどころが無く、ひたすら悩みぬいている状況なんだと勝手に思う。対象を分割変容させて再構成する(例えば人物を花や非現実的な形として・・)までは良いのだが、次には新しい形の(例えば)「線」に拘りだすのだ。そしてその「線」は無限に広がりだし、完全に制御できなくなる・・・その結果が多分作品なのだろう。
 こうしたプロセスは実は先の「作品が出来るまで」では解明されない。何故ならそのプロセスは単に物理的な材料で再構成しただけだからだ。つまりクレーの創作の秘密は全く解明されて終わっていないのだ。ここにこの展覧会の欲求不満が大いにある。いや、実のところ秘密はそのままにして彼の「悩み」を味わうのが本来の鑑賞方法なのだろう。カンバスに向かって線を描くとしたらどうするか?みたいな問答こそが彼の真骨頂なのかも知れない。
 尚、晩年に追求した有名な「天使シリーズ」は今回は全く展示されていないのでご注意を。
期間は5月31日~7月31日。東京国立近代美術館 一部作品の入れ替えがあるそうです。
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アメリカン・アイドル シーズン10

アメリカン・アイドル シーズン10
 今回は海外テレビ番組として丁度10周年を迎えるアメリカン・アイドルを採りあげてみよう。アメリカン・アイドルは素人参加の「のど自慢番組」といえばわが国では(とりあえずは)判り易いかも知れぬ。しかし参加者にとってはかなり過酷な番組でもあるのだ。大体一回で決着が付くはずも無く、何回にも渡り様々な曲を歌い続けて勝ち残らねばならぬ。何故それまで過酷さと試練に拘るとかと言えば、丁度1990年頃のアメリカのテレビ番組にある新しい流れが出て来たことと関係がある。それまでテレビの3大ネットワークと言われていたABC、NBC、CBSにケーブル中心のFOXが映画界から殴りこみを掛けてきたのだ。初めはX-fileを初めとするエンターテインメントに拘ったドラマが中心であったが、在る時を境にして「素人参加」を前面に打ち出した番組が評判を呼び出した。例えばある期間何人かが無人島で暮らし抜くという、過酷さと試練そのもののような「サバイバー」などは高視聴率を稼ぎ出したものだ。最後の勝利者(暮らし抜くだけでなくその生き様が視聴者からの投票で評価され、どんどんエリミネイト~落伍していくのだ)は大観衆の前で賞賛され、そのまま芸能活動に入るのが何時の間にか決まりごとになってしまった。
 そうした素人参加のシステムを唄(+ダンス)で表したのがアメリカン・アイドルである。先ずは全米各地で審査員(これがそのシーズン毎に実にユニーク)のオーディションを受ける。そこでパスすればハリウッドに50人近くが集められ、毎回様々なテーマ、例えばビートルズ特集、ジャズ、R&Bなどに沿って喉を競うことになる。その間はハリウッドに文字通り缶詰になる訳でこれが前述のサバイバーを彷彿とさせる。また毎回異なる唄を歌うからトレーナーが付く。これがまたレディ・ガガ、ビヨンセ、など実に豪華である。オーディションの様子は簡略化されるが、ハリウッドに移ってからは一回一回が番組として製作放映されると同時に大きな特徴として審査員はコメントのみで最終決定は「電話による視聴者の声」である点だ。視聴者に受け入れられなければ、どんどんエリミネイトしていくという、これも過酷な話だ。しかし優勝者には当然ながら歌の世界へのデビューが待っているという訳だ。
 今シーズンは特に評判が高かったのだが、それは審査員にジェニファー・ロペスやスティーブン・タイラーらが居たからだと思う。その的確な指摘やジョークの楽しさは計り知れないパーフォーマンスに満ち溢れていた。また番組放映中にロペスはピープル誌の「一番美しい女性」に選出されたり、タイラーは自伝を出版したりと抜け目がないが、それもまた相乗効果として史上空前の視聴率を稼ぎ出したことに結びついている。勿論エントリーしている面々の音楽的素養は極めて高く、全員がそのまま歌手になってもおかしくないパーフォーマンスを持ち合わせていたのも事実である。
 フィナーレの回は最後に勝ち残った2人の最終結果発表なのだが、実際それはどうでも良く、2時間に渡るエンターテインメント・ショー、即ち大御所トニー・ベネット、トム・ジョーンズに始まり、レディ・ガガ、ビヨンセ、と繰り広げられるアメリカン・ミュージックのライブシーンの数々が圧倒的迫力で楽しませてくれる。これはグラミー賞発表のイベントに匹敵するくらいの素晴らしさであった。このシーズン10は今後長く語り伝えられるでありましょう。

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ホームページの裏話(85)

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ホームページの裏話(85)
 さて今回も現在アップ中のチェリーとジャンヌ「トミーとウイルの物語」についての裏話を記してみよう。題して「ネコの音楽的素養について」である。先ずは音を聴く能力について調べてみた。ネコが聴ける音の周波数範囲は犬の倍、犬が人間の倍だから4倍の広きに渡る。人間は20,000サイクルの音が上限であるがこれが80,000サイクル、つまり10万サイクルに近い音が聴けているわけだ。しかもネコの耳はご存知のように「動かせる」ので音のする方向がかなりの精度で判別できる。飼い主の声や物音などネコが様々な日常の音を聞き分けているのはそれが理由である。
 「トミーとウイルの物語」ではウイルがトミーにサックスを教える際に、先ずは自然界の音を良く聴くことを進めている。これは実はネコの能力を熟知したからなのである(ってこじつけかな?)。また過去の例ではジャンヌちゃんがヴォーカリストとして意外な面を披露したこともあったのだが、これもこうしたことと無関係ではないと思われるのだ。

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季節の音楽(水無月)

季節の音楽(水無月)
 季節の音楽(水無月)はブラームスのヴァイオリンソナタ第一番を取りあげる。何時の頃からか「雨の日はブラームスを聴く」などというフレーズが実しやかに言い伝えられているが、その理由としてこのヴァイオリンソナタ第一番の名称が「雨の歌」ということに由来しているのかも知れぬ。
 さてブラームスのヴァイオリンソナタは全3曲ある。それぞれブラームスの絶頂期に相次いで作曲されているだけあって実に充実した内容である。ブラームス独特の唄心に溢れているだけでなく、ヴァイオリンとピアノのバランスが絶妙なのだ。それはそのまま彼のピアノトリオ、ピアノカルテット、などにも通じる楽器たちの自然な融合~まるで多重唱の如き~が素晴らしい。特に第一番は第一楽章から歌曲の如き静かなる高揚感が聴くものを惹きつけて止まぬ。この雨の歌という副題は第三楽章が彼自身の歌曲「雨の歌」から流用されているという理由からだそうだ。
 またメロディーメーカーとしてのブラームスは数々の「おいしい旋律」を発想してはそれを書き留め、パッチワークの如く曲にまとめていった訳でそれは実に楽しいプロセスだったに違いない。一方、曲の出来栄えには非常に厳しくこの3曲のソナタに関連して破棄された曲や断片は夥しい数にのぼったという。ということはこの3曲はブラームスのエッセンスと言っても良いかも知れぬ。
 さて第一番のレコードは数あれどオイストラッフのヴァイオリン、オボーリンのピアノがスケールの大きさで抜きに出ている。一方シェリングのヴァイオリン、ルビンシュタインのピアノによるものは室内楽的喜びに満ちていてこれまた捨てがたい。
 このヴァイオリンソナタの日本版の楽譜を入手したのはこの梅雨間近であり、やはり「雨の歌」はイマドキの季節と縁が深いようである。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

プロフィール

JASON

Author:JASON
はじめまして。JASONと申します。ホラー映画が大好きで放映される作品は大概録画して観ています。時間が許せば劇場にも足を運びますが、ことホラー映画に関して言えば米国で公開された数の十分の一くらいしか我が国で公開されないのが残念です。因みにハンドルネームのJASONは御存じ13金のシリーズから取ったものです。さて小生の他の趣味ですが楽器では習い事レベルですが、クラシックのヴァイオリンとジャズピアノを奏します。またカクテルに興味があり、冬はマンハッタン、夏はマルガリータなどを作って楽しんでいます。更に ホームページギャラリー「チェリーとジャンヌ」を公開中です。黒猫チェリーと白猫ジャンヌが登場するイラストストーリーとギャラリーの二本立てになっています。見て頂いた方々のご感想や意見交換などをホームページつくりに反映していきたくよろしくお願いします。なお、URLはhttp://parnassum.web.fc2.com/です。

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