ウエイワード・パインズ(3部作) ブレイク・クラウチ

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ウエイワード・パインズ(3部作) ブレイク・クラウチ
 今回は読書感想。B・クラウチ著(東野さやか訳・ハヤカワ文庫NV)の「ウエイワード・パインズ」である。本としては「パインズ」「ウエイワード」「ラスト・タウン」という3部作構成になっている。実は本年夏にこの作品はFOXチャンネルで第1シーズン10話が放映されたばかりで監督はあのナイト・シャマランなのであった。そのテレビシリーズはユニーク極まりなく、ついつい原作を読みたくなってしまった訳だ。
 主人公イーサン・バークは交通事故に遭遇し病院で目を覚ます。そこは見知らぬ街「ウエイワード・パインズ」。そしてそこに住み暮らすことを強要される。脱出を試みるが敢え無く失敗。その過程で街の周辺にはバリアーが張り巡らされていることも知る。
 という設定は目新しくもないし、以下の説明もネタばれにはあたらないだろう。テレビシリーズを観ても本作を読む障害にはならなかったからだ。
 実は2000年未来の地球の話なのだ。タイムマシーンとかでなくコールドスリープ(冷凍睡眠)で。同じ未来に行くアイディアは(いけると仮定した場合)色々あるのだが、タイムマシーンは予め無人機(ドローン)を送りこむとか事前調査は可能である一方、コールドスリープは全く予想が付かず出たとこ勝負の「面白さ」があるわけだ。その辺りが本作のリアリティに繋がる訳で中々上手い作戦だ。実際バリアーの外には退化(進化?)した獰猛な肉食種族アビーが跋扈している。第一作「パインズ」はこうした謎ときが中心。第二作「ウエイワード」は美しく住み易い筈のウエイワードが実際は窮屈極まりなく、かつ将来性の不安が露呈して、住民は混乱するというアンチ・ユートピアへのくだりが中々よろしい。そして第三作「ラストタウン」ではバリアーが外されアビーが街に大挙して侵入し阿鼻叫喚の地獄図となる。作者はここに各人にスポットを当てたエピの積み上げ(映画的手法とでもいうべきか)を使い緊迫感を盛り上げている。まあラストだけはネタばれになるので伏せておこう。
 ウエイワード・パインズはこのように設定謎解きドラマからジェットコースター的サスペンスまで雑多な要素が混じり合っている。一方では何かこう一本パンチの利いたサムシングが不足している。またこうした世界を構築した影の黒幕、科学者であり大富豪のデビット・ピルチャーが何故こうした行動に出たかという理由がイマイチ不明である。宗教めいていても如何わしくても何かしらブチ上げた方が良かったのではないか。
 因みに前述したテレビシリーズはノベルズとはかなり異なっている。つまり第2シーズン(今秋放映予定)に期待が寄せられるところなのだ。
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詩的で超常的な調べ

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詩的で超常的な調べ
 今回は読書感想を述べてみたい。その本とはローズマリーブラウン著の「詩的で超常的な調べ」(国書刊行会)である。ローズマリーブラウン(以下ブラウン夫人と記す)の話はかなり有名だが現時点ではほとんど忘れ去られているのが実態であろう。
 ブラウン夫人は霊的な能力があり、霊とのコンタクトが可能なのだが、その相手が古今で著名な「作曲家」であるところが大変興味深い。つまりリストに始まりショパン、ブラームス、ラフマニノフ、等である。しかも彼らから「新作」を伝授されそれを楽譜に表し、更にはそれらの曲を自ら演奏したレコード「ローズマリーブラウンの霊感」をリリースするといった具合なのである。また英国のラジオやテレビ等のメディアには何度も取り上げられたという。これを一種の奇談とか不思議現象とかに分類して仕舞うのはいたしかたのない事なのかも知れぬ。
 さてこうした情報は1970年後半以降全く途絶えてしまっていた。しかし実際ブラウン夫人は1971年に自伝とも言える本書を著していたのだ。それが44年の歳月を経てようやく邦訳版が出版されたのは我が国のこうしたジャンルへの理解不足と言って良いだろう。訳者があとがきで明らかにしている如く、本書を読み解くには「霊的な現象への理解?」及び「クラシック音楽の素養」が有る程度は必要だ。これは我が日本では敬遠されがちな要素なのであろう。
 そして本書の白眉は登場する(というかブラウン夫人に新曲を提供する)大作曲家たちの性格描写である。そもそも幼いブラウン夫人に「将来また会おう」等と謎めいたメッセージを送ったフランツ・リストは本件の中心的な役割を演じ、次から次へと作曲家たちを連れて来て紹介する。ブラウン夫人による彼らの表現は実に的確で面白い。 我々は作曲された曲からしか「作曲家を知り得ない」のだからこれは実に興味深い内容だ。
 ここで「そうした現象自体が如何わしいから採るに足らぬ戯言だ」と決めつけてはいかにも勿体ない。本件は1960年後半から英国で起こった話である。霊的な現象に理解を示す英国ならではの話だとしても、クラシック音楽ファンには是非読んで頂きたい著作に間違いはないだろう。

寺田寅彦 ヴァイオリンを弾く物理学者

寺田寅彦 ヴァイオリンを弾く物理学者(末延芳晴著)
 日曜日はその他のテーマということで今回は最近読んだ本を採りあげる。昨年末に出版されたばかりのこの本は物理学者であり、エッセイストでもあった寺田寅彦がヴァイオリンを“嗜む”ことを扇の要として様々な方面にわたり考察を繰り広げている。JASONの様にある意味彼の“ファン”である人間には堪らないテーマであり評論である。また「寺田寅彦 妻たちの歳月」に続く厚い単行本(テーマ同様に重い!)でもある。寺田寅彦がヴァイオリンに非常なる興味を示し、遂には買い求め、学者先生には指南を乞い、はたまた友人と合奏するに及ぶ、という有様はただ事では無い。よって著者はその理由、原因を探ることになる。それは当時我が国に初お目見えしたメディア、即ち“演奏家によるコンサート”であり“蓄音機”であり“ラジオ受信機”などであって、それらに寅彦が“何を観たか”がポイントになる。そして辿りついたのは“耳の感性”というわけだ。これは耳に限らず観察し分析し評価する寅彦独自の能力であって彼のエッセイをいくばくか読めばただちに分ることでもある。
 本書はその時代の文化人、夏目漱石や正岡子規などとの“文化的交流”にもスポット当てており実に興味深い。中には西洋音楽に関する分析など今以て色褪せない処があるのは見逃せぬ。ただ、寅彦がどれだけヴァイオリンを弾けたのかは資料が無いので全く分らない。また筆者は最後の方でジョン・ケージとの類似性を述べているが、実際的な話(二人は時代が違うので交流も何も皆無)では無く、完全に作者の“想いだけ”となって空回りしてしまっているのが残念である。
 とはいえ、寺田寅彦という一定の枠には収まらないクロスオーバーな活躍をした人物をヴァイオリンと言うキーワードで浮き彫りにした功績は確かに大きいものがある。彼のファンは必読であろう。

テーマ : 読んだ本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

木村さんのリンゴ 奇跡のひみつ

木村さんのリンゴ 奇跡のひみつ (ムー・スーパー・ミステリー・ブックス)
 日曜日はその他のテーマということで本を採りあげる。題名は「木村さんのリンゴ 奇跡のひみつ」という。木村さんという実在のお百姓さんが「無農薬のリンゴ」を成功させるまでのお話だが、その過程での様々な体験もまた非常に興味深いものがある。例えば交通事故で命拾いをしたり、数多くの危機一髪的体験が語られ、そこには何かしら因縁めいたものが感じられる。さて前人未到の「無農薬リンゴ」は11年に及ぶ試行錯誤の繰り返しで達成し得ている。但し、その試行錯誤は決して行き当たりばったりでは無く、理論理屈でしっかりと裏打ちされているのだ。しかし様々な(他人では考え付かない、或いは躊躇する)手段を考え付いた結果、それを実行するには相当の勇気と決断が必要だったに違いない。家族の行く末を思いつつ挙行できたことは正にそれこそ「奇跡的」というしかない。
 無農薬の栽培には自然系への理解と愛が必要で、それは単に農薬、肥料、除草剤などを止めれば達成し得るものでは到底無い。また無農薬リンゴの完成までのプロセスは他の分野、例えば農業経営、人間関係などへの応用が可能と考え、全国を回って講演をしているそうな。  
 本の後半はUFOアブダクションの話が出て来るが、彼の口から話されると何故か絵空事に聞こえないから不思議である。いずれにしても生き方なり考え方なりの参考になる事は間違いない本であろう。

テーマ : 考えさせられる本
ジャンル : 本・雑誌

権力に翻弄されないための48の法則

権力に翻弄されないための48の法則
 日曜日はその他ということで本を取り上げる。「権力に翻弄されないための48の法則/R・グリーン&Y・エルファーズ(角川書店)」である。原題はthe 48 Lows of Powerという。つまりパワーを得るための法則という訳である。それがどうして「翻弄されない」になってしまうのか。この邦題は少々地味だが中々意味深長である。平たく言えば成功するための秘訣集、金言集、ノウハウ本なのであるが、視点をパワーに置き、パワーを得る方法、活用方法など一歩突っ込んだ内容になっている。と言いたいのだが、実は本書は48Lowsの具体的事例を古今東西の歴史的事実の羅列で示しているのだ。それも我々の殆ど知らない秘話に近いもので、空間的には地球全土!に及び、時間的には紀元前から1980代年迄と無茶苦茶に幅広い。古代ローマ帝国のカエサル、徳川家康、千利休、ナポレオン、キッシンジャーなどの有名どころは勿論、その史実(?)が陰謀モノとして第一級エンターテインメントに仕上がっており、これまた滅法面白いのだ。そして壮大な史実の後には世界中の童話、民話、訓戒集などの意味深なエピソードが(小文字で)ひっそりと添えられているという心憎い演出もある。殆どが一国のリーダーの話であるから、我々庶民は「翻弄されて」いるに相違無い。そこで本書の邦題となる訳である。
 例えば「多くを語るな」という法則がある。解説として「語らないことこそ、相手に脅威を与える」とあり、「人間誰しも話したがる傾向に有るが、それをあえて押さえるパワーこそが大事」と結ぶ。そして法則を守った場合の歴史的史実、守らなかった場合、と続き、ポイントや考え方などが補足される。最後は民話や有名人の格言などで締めくくられる。
 また、「努力のあとは微塵にも見せてはいけない」というのがある。人は自らが如何に苦労したかを語りたがるが、それは相手に自らの成果をみすぼらしく見せる以外何の効果も与えない。むしろ苦労の中に本人の「ノウハウ」があったりすればすぐさま盗まれてしまう。成果はどのように成し遂げられたかが分からないが故にパワーとして燦然と輝くのである。うーん。納得してしまいますねえ。
 こうした話が48集められ整理されている状態は壮観ですらある。言い換えればこれこそが人類史のレジメなのかもしれない。歴史を勉強するのなら年号や天皇の名前を覚えるより、陰謀渦巻く宮廷(宮廷こそが世界であった)紛争、戦場における虚々実々の駆け引き、などの根元である「パワーのノウハウ」を学んだほうが良いかもしれない。即ちそれが「歴史から学ぶこと」の本質なのであろう。

テーマ : 本の紹介
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

JASON

Author:JASON
はじめまして。JASONと申します。ホラー映画が大好きで放映される作品は大概録画して観ています。時間が許せば劇場にも足を運びますが、ことホラー映画に関して言えば米国で公開された数の十分の一くらいしか我が国で公開されないのが残念です。因みにハンドルネームのJASONは御存じ13金のシリーズから取ったものです。さて小生の他の趣味ですが楽器では習い事レベルですが、クラシックのヴァイオリンとジャズピアノを奏します。またカクテルに興味があり、冬はマンハッタン、夏はマルガリータなどを作って楽しんでいます。更に ホームページギャラリー「チェリーとジャンヌ」を公開中です。黒猫チェリーと白猫ジャンヌが登場するイラストストーリーとギャラリーの二本立てになっています。見て頂いた方々のご感想や意見交換などをホームページつくりに反映していきたくよろしくお願いします。なお、URLはhttp://parnassum.web.fc2.com/です。

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