タイタニック

(JASON通信アーカイブ その11)
タイタニック(1999年12月WOWOWにて視聴)
 ようやく観ました。昨年(1998年)に大ヒットした海洋スペクタクル作品である。とにかくジェームス・キャメロンのフィルムメーカーとしての力量が遺憾無く発揮された秀作である。
 本作はドラマとか演出ではなく、圧倒的な映像美学に酔わされる作品である。しかも精緻かつ計算され尽くされた構成で180分を一気に見せる。テーマは「悠久の時間の流れに逆らえない刹那さ」であり、その中心にある男女の愛は、時間により丁度タイタニックが真ん中から折れるように、引き裂かれるのである。このテーマはキャメロン監督が「ターミネーター」以来求めてきたものと全く同一である。今回はとてつもないスケールでそれを描いたのだが、本当にやりたかったのは世紀の大パニックであろう。
 現在と過去を交差する構成もさりげなく取り入れているし、登場人物も特別異様な人間はおらずごくごく普通の人たちとして描かれている。ここは悪人も善人も居ない。タイタニックが主人公なのだ。だからどうしても映像に目がいってしまう。キャメラは巨大なタイタニックを様々な角度から生き生きと捕えている。そして沈没シーンではタイタニックより更に巨大(広大)な北極海と星空に視点は移る。更に沈没後は逆に北極海に浮かぶ凍り付いた人間達に極度に接近したアングルを撮っている。こうした視点の移動シークエンスが実に快感なのだ。しかも音楽は殆ど無く(楽隊の調べも一定で環境音にちかい)、実際の声や騒音などでそのリアルさを醸し出している。つまりこの作品は究極の職人芸みたいなものなのだ。主演が誰とか、主題歌がどうのこうのとかは全く関係ない。大袈裟で、もっともらしく、それでいて妙な現実感のあるドキュメンタリイ映画なのである。キャメロン節に酔うてておればよい傑作である。
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テーマ : 心に残る映画
ジャンル : 映画

レッド・ヴァイオリン

(JASON通信アーカイブ その9)
レッド・ヴァイオリン(2000年6月にWOWOWにて視聴)
 1998年のカナダ・イタリア合作作品。監督は「グレン・グールドの32の断章」なる怪作をものにしたフランソワ・ジラール。ニューヨークで開催されている楽器オークションから物語りは始まる。その日の最後に登場するのが「レッド・バイオリン」であって、それに纏わる人々が会場に集い、お互いに競り合うという設定である。
 楽器の生い立ちはこうだ。バイオリン製作者の妻が子供を産む前にタロット・カード占いをする。そして占いどおりに母児共々死んでしまうのだが、その代わりに「レッド・バイオリン」が誕生するという訳。そのタロット・カード占いが一種のガイドとなって、その後様々な歴史の中で「レッド・バイオリン」がどう振る舞うかがエピソードとして語られていく。血の色をしていると言い伝えられているこの楽器は、歴史上、激動の時代に登場しては消えて行く。音楽を愛する人たちと世間との関わり合いを中心に運命の不可思議さ、哀しさが語られていくのである。
 勿論「レッド・バイオリン」の生まれたのは中世イタリア(多分クレモナ?)であり、ヨーロッパ中心にお話は展開するのだが、近世になると毛沢東時代の中国に移り、これまた興味深い(というかどことなく懐かしい)内容である。物語の全貌が徐々に分かってくると極めて良く出来た作品であることが判明する。演出の手腕もさることながら、映像が実に美しい。ヨーロッパ映画なんだからというだけでは済まされない画面構成など非凡な才能が随所に発揮されている。また、音楽が凝っていて、全てオリジナルなのだが、同時代の「パガニーニ」や「バッハ」などの作品を強烈に意識した曲想にはただただ脱帽モノである。
 更に物語後半に登場する黒人のアンティークの鑑定者が様々な角度から、「レッド・バイオリン」を分析、解析、鑑定するのであるが、この人が過去どのようにこの楽器と関係してきたかは、一切語られないのだ。ここんとこはミステリアスであり、未解決のまま作品は終わる。旨いですなあ。まいりました。

テーマ : 昔の映画
ジャンル : 映画

パラノイア創世記

(JASON通信アーカイブ その8)
パラノイア創世記(荒俣宏 ちくま文庫 絶版) 1993年付
 現代の奇人にして鬼才、天才の異名をとる荒俣宏がまたまた贈る珍妙なエッセイ。パラノイアとは訳すと偏執狂、つまりはマニア、今風に言えばオタクの事。創世記ということはそう、かの大昔にもオタク族がりっぱに存在していたのだ。しかも彼等の時代は人と人との繋がりが薄く、情報網にも限りがあり、生活が貧困でも(つまりお金を生活以外に投入できたという事)別段何の差支えも無く、つまりはアブない人が結構暮らせた環境というものが整っていた(?)からして、そのパラノイア振りは半端じゃあ無い。自らのやりたい事柄をとことん追求したから、とんでもない事件、物件、案件に人権、番犬迄も加わってはちゃめちゃな騒動が持ち上がってしまっていたのである。しかし現在それらの資料は殆ど残っていない。昨今の芸能ニュースに比べたら本当に驚天動地の内容なのに、それほど騒がれないのは「あまりにバカバカしい」のと「のんびりしたコンセプト」の為かも知れない。博物学なる新学問を構築した著者が過去のこうした事例を殆ど埋もれてしまっていた膨大な資料から掘り起こし、検証し、収集して出来あがったのがこの本なのである。
 著者がこの本をしたためた理由は以下の如し。巣鴨精神病院のカルテから、ある患者が「横に読むと独語に読め、縦に読むと業書(日本語)に読める全く新しい言語」を発明した記録を観て、最も創造的な作業が精神の安定性を欠いた状況で初めてなされる事に心底感動したからだという。そしてここの病院長は(大正の時代と思われる)患者のカルテを几帳面に整理して後世の役に立てようとしたほんま立派なできたお方だったらしい。精神病院を監獄から解放したことでも有名だそうだ。古今から言われている狐憑きや発狂という異常な症状を医学的にきちんと検証し、肉体的欠陥(動脈血栓とか)に結びつけて治療しているのだから、迷信の渦巻く時代ではさぞかし大変なことであったろう。
 さて本書ではこうした病院長の例の他に、テスラーコイルで知られる「ニコラス・テスラ」も登場する。この人はあまりの天才の為エジソンの迫害に遭って埋もれてしまった事は余りにも有名である。しかるにエジソンの直流に対して彼の唱える交流のお蔭で現在の我々の生活があるのだから面白いものである。ただ彼も交流理論から、エネルギーの空間伝送にまで考えを広げた為に、大衆がついていけなくなってしまい、晩年はある意味で不幸な人生を送ったという。また彼はエジソンとの経験から論文発表を全くせず、大量のメモ書きが残っているだけらしいが、実のところこうしたメモは当局が彼の死後直ちに封印してしまった為、公にはなっていないのだ。かのフィラデルフィア・エクスペリメントに関係しているという噂なのだが。
 とまあこうして昔の奇人変人を集大成しているのである。時代もおもしろいし、人間もおもろい。これらのパラノイアの面々は社会のシステムがそれほど完備してないが為に全てを一人で切り盛りして、結果として社会とのバランスが一見とれていたが故にかろうじて存在が許されていたのである。現代ではとーてい無理な話である。

テーマ : エッセイ/随筆
ジャンル : 本・雑誌

バベットの晩餐会

(JASON通信アーカイブ その7)
バベットの晩餐会(1992年4月にWOWOWにて視聴)
 1989年のデンマーク映画。これが滅法面白い。北欧の寒村に静かに暮らす老姉妹の下に大陸から女が流れ着く。そのバベットが下女として勤めて20年。料理にたけた彼女は実はパリのレストランの女料理長であったのだ。しかしそれは今は昔の物語。ところが、彼女の唯一の楽しみが「宝くじ」で遂に一等の1万フランを仕留めて仕舞う。
 さてここからが本題である。老姉妹の父親の何十年回忌かの記念の夜の晩餐会を総て一人でやらしてくれと頼む彼女は一週間かけて大陸へ材料を買い出しに出掛ける。そして、浜辺に運ばれて来た数々の材料、大きな氷柱、海亀、鶉、そしてアシスタントの少年。ここいらから観客はワクワクしてくるのだが、同時に演出の妙でもあるのだな。
 そして当日の夜である。パリの最上級レストランのディナーを再現する席に招かれたのは村の人々と村出身のなんとか将軍。この将軍にしかメニューの素晴らしさが解らないという設定になっていてそれがたまらん。各料理には其々にワインが異なり、パペットがアシスタントの少年にそれをいちいち指示する様子がたまらん。料理は別段豪華絢爛というわけでは無く、トリフやキャビアなんかをふんだんに使って味で勝負している様が手に取るように解るのもたまらん。勿論こうした場面以外にも表面的ではあるが寒村の人々をサラリと描いていて心温まる仕上げに成っておる。つまりは大人の寓話なんであります。傑作と言ってよいでしょう。
 余談ではあるが北浜の三越劇場でこの作品が公開されたおり、劇場に隣接するレストランでは毎日先着10名に限り映画と全く同じメニューを確か3万円くらいで提供していた記憶がある。それも今は昔の事と成って仕舞ったのであるが。
(尚、2012年現在北浜の三越も既に無く、本当に今は昔の物語となって仕舞ったのだ)

テーマ : お気に入り映画
ジャンル : 映画

カルトQ

(JASON通信アーカイブ その6)
カルトQ(1992年3月付)
 異色のクイズ番組。以前は深夜に放映されていたという。クイズ番組といえば昨今は芸能人が出演し、レポーターが海外に出掛けて行き、この品物は何でしょう形式みたいなまあ他愛の無いヤツとか、大陸横断ウルトラクイズと称するモンとか、正解がごく一般的なものが多かった様に思う。しかし、一億総オタク化した今、そんな生ヌルイ問題では皆の衆が承知しなくなってしまった。いわば、超マイナーな問題とオタク族との対決、これがキーワードなんである。つまり「マイナー志向」が市民権を獲得しつつあるのだ。
 さて本題の「カルトQ」である。毎回テーマが決まっており、予選まで行われるという盛況ぶりである。テーマは「デパート」「ラーメン屋」というごく一般的な題材(これは東京周辺に限っているのがイマイチなんであるが)から、ついに出ました「サンダーバードファミリィ」(これはゲーリィ&シルビア・アンダーソンが生み出したスーパーマリオネーション作品、即ち「スーパーカー」「宇宙船XL-15」「スティングレイ」「サンダーバード」「キャプテンスカーレット」「ジョー90」と実写作品「謎の円盤UFO」「スペース1999」を指す)とか、「手塚治」とか、いかにもと言った場合など様々。当然回答者もフツーらしい人(?)とアブナイ人種とに大別される。サンダーバードでは異常な中学3年生に番組は乗っ取られたし、つまりは出題者と回答者の激しいバトルでもあるのだ。問題が出され回答がされる。と同時に司会者が何も言わなくても回答者達が回答の解説をとうとうと始めるのである。もう番組はハチャメチャに展開して誠に面白い。オタク族の井戸端会議なんである。
 と思えばまた、「エルビス・プレスリー」の回では「レコードBlue Hawaiiに収録されている曲目を全部答えなさい」という超難問に52歳の主婦がゆっくりと丁寧に全12曲をしかも順番に(!)答え、司会の女の子は感動で目を潤ませてしまうてなジーンとくる場面もあるのだ。とにかく注目のトレンド番組であります。

テーマ : 懐かしいテレビ番組
ジャンル : テレビ・ラジオ

プロフィール

JASON

Author:JASON
はじめまして。JASONと申します。ホラー映画が大好きで放映される作品は大概録画して観ています。時間が許せば劇場にも足を運びますが、ことホラー映画に関して言えば米国で公開された数の十分の一くらいしか我が国で公開されないのが残念です。因みにハンドルネームのJASONは御存じ13金のシリーズから取ったものです。さて小生の他の趣味ですが楽器では習い事レベルですが、クラシックのヴァイオリンとジャズピアノを奏します。またカクテルに興味があり、冬はマンハッタン、夏はマルガリータなどを作って楽しんでいます。更に ホームページギャラリー「チェリーとジャンヌ」を公開中です。黒猫チェリーと白猫ジャンヌが登場するイラストストーリーとギャラリーの二本立てになっています。見て頂いた方々のご感想や意見交換などをホームページつくりに反映していきたくよろしくお願いします。なお、URLはhttp://parnassum.web.fc2.com/です。

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